悪戯の理由


呆けた顔でぼんやりと庭を眺めていた近藤の目の前に

突然

団子が現れる。

なんだ?と思って振り返ると、そこには沖田が立っていて
「近藤さんこの団子食いてぇですか?」
なんて問い掛けて、近藤の隣りに座り込んだ。


一度不思議そうな顔をして、それから首をすこし傾けて
「ん?そりゃまぁ・・・食いたいかな」
と、近藤は答える。

唐突で、意図のつかめない質問に、ごく真面目に答えてしまうのは近藤という男のいいところで。
それくれるのか?と、もう疑問も抱かずにその目は言っている。

「そうですかィ」

自分に向けられた嬉しそうな視線を放さないように、沖田は近藤を見つめ返し
小さく頷くと
手に持っていた団子を自分の口に入れた。

「ウソォー!!お前自分で食っちゃうのー!!」

男らしいと沖田は思う一重の瞳が大きく開かれて、いい年をした大人が口をあんぐりとあける。
なんて顔をするんでサァ。団子一つで。
そう思いながらも沖田は、近藤の顔から視線をけして離さず二つ目の団子を頬張り口をもぐもぐさせた。
口をパクパクさせている近藤の眉毛がハの字を描いている。

「総悟よぉーお前は何がしたいんだ?!」

うまそうに団子を頬張る沖田は無表情で、近藤はまいったなと思う。
弟みたいな、息子みたいな少年の行動は時々、いや、しょっちゅう理解不能で
困ってしまったり、いとおしくなってしまう。


問いかけに返事はなく
にゅっ
と、再び団子が近藤のすぐ目の前にあらわれた。

串に残っている団子はただ一つ

「近藤さん。俺は今猛烈に腹が減ってるんですがねェ、その腹の減ってる俺の、残りたった一つの団子食いやすか?」
近藤の瞳の中の光が揺れる。
その瞳を捕らえて放さない沖田はその瞬間が好きなのだ。

ホラ

だっはっは

近藤が破顔して、大きな笑い声をあげた。

イタズラを仕掛けられて、こんな風にこの人は笑う。子供のように瞳をきらめかせて、それでいて酷く親父くさい優しい目をして

「それはお前が食えよ。総悟」
大きな手が伸びてきて沖田の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「ガキ扱いは止めてくだせぇ」
「バーカそんなんするのはガキだけだよ」
ぷい。とここへ来て初めて沖田は視線を近藤から外した。
こうなるともう見ていられないのだ。

近藤さんその目は優しすぎるんでさァ。



 

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沖田は近藤さんに対して理不尽な嫌がらせをしてくれると嬉しいです。
そんでもって近藤さんはそんな沖田に家族愛みたいなの感じちゃって甘やかしちゃったりなんたりしたらいいなぁとか。
沖→近は半分恋愛、半分父性への憧れみたいなのが好きです。私は!!(誰も聞いてないよそんなこと)